コラム「東日本大震災の停電で見えてきたもの、回避できた危機」

東日本大震災40病院138人停電で「防げた死」
朝日新聞一面の様子

2016年2月25日、朝日新聞の一面で「被災40病院138人「防げた死」停電で機器停止・薬不足」とありました。東日本大震災の際、東北の病院で亡くなった1042人のうち、少なくとも138人は通常の診察体制なら救命できた可能性が高いという調査結果を厚生労働省研究班がまとめたものです。「防げた死」とは、主に病院が停電になった事で人工呼吸器の停止及び痰の吸入が出来ない事による窒息死や薬の不足が発生した事によるものでした。もし、電気が使えれば回避できる問題があったかもしれません。

1、震災による停電

電気がない為の人工呼吸器の停止や、痰の吸引が出来なかった為呼吸困難に陥ったケースがあります。吸痰器、電動ベッド、酸素濃縮器など、医療に使われる機器は、電気がないと動かない物が多々あり、手動での対応にも限界があります。災害拠点病院では自家発電装置の設置が義務付けられていますが、メンテナンスの不備や燃料不足で稼働しなかったケースも多く、今回の震災を機に自家発電装置と蓄電池との併用をお考えになった施設も多くありました。また在宅医療の場合、停電時に内蔵バッテリーだけでは不安を感じている方へは、外部バッテリーとして使える蓄電池があればもっと安心できます。

病院ナースステーション

2、物資の不足

避難所や災害拠点病院へ患者が急増し、集中したために医師や看護師だけでなく医薬品が不足しました。医薬品の在庫不足が悪循環をまねいてしまい、点滴の回数を減らした為に容体が悪化したケースもあります。災害拠点の医療現場、事故や事件現場、投光機や無影灯などの照明器具には電気が必要ですし、パソコンや分包機が使えれば薬の処方も容易です。

門前薬局

3、通信手段の途絶

転院、連絡が出来ない事で容体が悪化したケース。電話局(携帯電話を含む)基地局で電気が使えなければ通信手段は衛星電話のようなものに限られます。電気だけで解決する問題ではありませんが、停電での電話の不通を認識されていないケースも多くあります。昔ながらの黒電話なら使えても、内線で子機を使うタイプの電話機やビジネスフォン・ナースコールなどは主装置に電気を使用する為、電気が来なければ使えません。とはいえ、電話会社の基地局が機能している場合は、携帯電話も使えますのであとは非常用電源で充電さえできれば通信手段が途絶する心配はほぼなくなるでしょう。

厚生労働省は災害に伴う停電でも通常の診察が継続できる準備を提案しています。